許容される試験車両重量と車検時重量の差異

排ガス試験を行うシャシダイには機械慣性式と電気慣性式があります。

日本にある全ての試験施設を使ったことがあるわけではありませんが、知る範囲で言えば日本車両検査協会(VIA)さんは機械慣性式、日本自動車研究所(JARI)さんは電気慣性式です。この2つの違いは実際に走行している状態の負荷、走行抵抗を負荷の組み合わせで機械的に再現しているのが機械慣性式、電気的に再現するのが電気慣性式という理解でいます。

機械慣性式は負荷の組み合わせで抵抗を再現するので1kg単位で負荷を設定するのが現実的ではなく、ある程度の重量の範囲にある車の走行抵抗値(≒等価慣性重量)はいくつです、という指定がなされています。機械慣性式は負荷の組み合わせて疑似的に走行抵抗を再現しているのである程度の範囲を持って設定されているというのは自然なことだと思います。

対して電気慣性式は1kg単位で抵抗がセットできるので走行抵抗値(≒等価慣性重量)の範囲ということを考える必要がありません。指定された重量ぴったりの負荷をかけることができます。

ただ、海外モノの架装は遅れてくることが珍しくなく排ガス試験時に車検受検時の重量が確定していないということもあるわけです。機械慣性式であればよほど「範囲(ランク)」の境に近くなければ車検時と排ガス試験時のランクがずれるということはありません。ただ電気慣性式はランクというもの自体がありません。

差異の許容差については並行輸入自動車審査要領8.3.1(3)に言及があります。

(3)JE05 測定モードで排出ガス試験を実施した自動車にあっては、次のいずれかに適合するものでなければならない。
① 機械式慣性のシャシダイナモメータを使用した場合は、排出ガス試験結果成績表に記載されている等価慣性重量は、当該並行輸入自動車の試験自動車重量が、本則 7-58-1-2(2)の表の試験自動車重量の範囲に係る等価慣性重量と同一でなければならない。

② 機械式慣性以外のシャシダイナモメータを使用した場合は、排出ガス試験結果成績表に記載されている等価慣性重量と当該並行輸入自動車の試験自動車重量との相違は、以下の範囲になければならない。
ア 当該成績表に記載されている等価慣性重量が 4,000kg 未満の場合は、等価慣性重量+125kg から等価慣性重量-124kg の範囲
イ 当該成績表に記載されている等価慣性重量が 4,000kg 以上の場合は、等価慣性重量+250kg から等価慣性重量-249kg(下限が 3,875kg 未満となる場合は、3,875kg と読み替える。)の範囲

並行輸入自動車審査要領より引用

ただ、これについては「JE05モード」に対する言及でして、WHTCモードに対するものではありません。WHTCモード自体は切り替わった当初「JE05モードの一部改正」というように言われていたようですから排ガス試験を行う施設からするとこの項が適用になるのでは、ということでした。ただ、審査事務規程を見るとWHTCとJE05では明確に違うものと見做されていように取れるので「この記述は適用対象外です」という検査事務所もありました。

ただ、WHTCモードの対象となる大型の自動車で10kg単位で重量を合わせるというのは至難の業。ズレは許容されないのか…といえばそうではなく。ただ、

試験自動車重量により近く、かつ、試験自動車重量より重いものでなければならない。

審査事務規程7-56-1-2(2)②

という解釈の範囲が広そうな何とも言えない記述になっています。

言いたいことは

・WHTCモードに対する許容差は適用されるのか

・適用されない場合「より近く、かつ、重い」は具体的にどれくらいなのか

は事前にしっかり詰めておきましょうということです。排ガス試験は1回の費用も大きいですし万一検査事務所から「このレポートは無効です。もう一度やってきてください」と言われても日数的に間に合わないということにもなりかねないので。

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