先週、知り合いの会社を訪問した際に社長と転角の話になりました。
ある種の架装車両にとって転角は鬼門で、万一基準を満たせないとなると迫りくる契約納期のプレッシャーを感じながらひたすら重心高を下げる作業に追われることとなります。重心を下げるウエイトも予め設計に組み込めているものであればいいのですが、そうではない場合は「どこにウエイト付けよう」から始めなくてはなりません。そもそもウエイトなしでクリアできる算段だと付ける場所がないというのはありがちな事態ではあります。
社長もウエイトを2トン付けたとかそれ以上とか、苦労話を色々と教えてくれました。
基本的に日本で設計しようが外国で設計しようが重心位置についてはモーメント法で算出して基準をクリアできるかどうかの判断をしているはずです。しかしながら外国で作ったものを日本に持ってきてみたら「これ全然無理じゃん」となるものもあるわけで…。社長が携わった車も30°の基準に対して実測したら27°だったとかで。3°上げるのには相当苦労するはずですが案の定大変だったとのことでした。
何故そんなことが起きるのかを考えてみると外国では静止状態での安定性という基準がないこともさることながらモーメント法と実測値との関係性が一番の原因かなと思います。すなわちいくらモーメント法で緻密に重心高・最大安定傾斜角度を出したところで実車を傾けるとそこまではいかないということです。
モーメント法で算出した安定角度から5°を減じた値を最大安定傾斜角度とする(審査事務規程7-6安定性)というのは恐らく現車を何台も傾けた結果実測値はそれくらいは悪くなるという経験則によるものではないかと思います。なのでマイナスされる5°を加味して「いけるかな」と判断するわけですが、ただ単に「日本ではこの車の基準は30°だ」とだけ伝えてしまうと…。他社さんのことはわかりませんがもしかしたらそういった伝達だけして悲劇を招いてしまっているところも中にはあるのかな…なんて思ったりもします。